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手を突き出し、恐らくまぶたを閉じることができなかったのか目の部分には白い布が被せてあった。思わずひっと声がでて引きつけを起こしそうになった。俺の父親を含め全員がみたが、皆同じような反応をしており中には腰が砕けて立てなくなる者もいた。 

全員が見終わって彼に謝ったあと、彼の両親が事情を説明してくれた。 
腕をさげるには、もう肩も外れているため両腕を肩から切断するしかなかった。瞼もまるで皮膚がそこだけなくなったかのようになっており、閉じることができなかったという。 

俺らはただただ泣きながらそれを聞き、彼の両親に謝った。

彼の両親はあなた達のせいじゃない。とずっと言ってくれたが、俺らはただただ謝るしかできなかった。その後泣きながら父親に連れられて家に帰った。 

父親が帰りながら車中で、ふと警察で中年男性がしたのと同じ質問をしてきた。地図で説明していたのを聞いたので大体の場所を言うと父親もそこかぁと呟いた。その場では聞く気になれず、その日はそこで会話は終わった。 

彼の四十九日が終わり、父親に葬式の日のことを聞いてみた。

父親は話半分で聞いてくれとの前置きをして教えてくれた。俺の祖父が父親に話したことだそうだ。 

恐らく彼の原付が初めに故障したのは「かんのけ坂」とよばれている所だろう。今ではかんのけと訛っているが、昔は棺桶坂と呼ばれていた。少なくとも祖父が子供の頃はそうだった。 

当時、棺桶をつくる仕事は(あくまでその近辺では)身分の低い人がする仕事だったそうだ。そのため棺桶一つの値段も安く、ひもじい生活をしていたそうだ。また差別もありかなり虐げられていたらしい。

そんな仕事で唯一儲かるのが特注品だった。例えば既成のものに入らないほど巨漢であるとか、なんらかの事情で既成の棺桶に入れられないケースに特注品を作るんだそうだ。 

特注品の話を聞き、合点がいった。棺桶に入らないほどの巨漢などそうそういるものではない。 

父親は続けた。手を拱いていたのが女性だという点でも思いあたる節があるという。祖父が子供の頃棺桶を作るのがとても上手な器用な女性がいたらしい。 
その評判は周囲に広まり、気付くと特注品の注文はすべてその女性の所にいったそうだ。

既成品はある程度作り置きしているが、特注品は死後注文が入って死体が腐る前にすぐに用意しなくてはならない。 
その女性は特注品であれど注文が入れば必ず次の日には棺桶を作り上げた。見た目もただの箱ではなく、装飾もちゃんとついておりとても一晩で作り上げたとは思えない出来だったそうだ。 
丁度その頃不審死が相次ぎ、彼女はそれらの注文を全てこなしたという。 

しかし最終的に、特注品の注文が彼女の所にしかこなくなり、どんどん私腹を肥やして行く彼女は、他の棺桶屋や周囲の農民からも妬まれ最後は若くして惨殺されたそうだ。

大勢に農具や工具で原型をとどめないほど無残に殺され田畑の肥やしにされたらしい。 

父親は、ここからは自分の予想だという。恐らく彼が田んぼの中で硬直していたのもそのせいではないか、手を拱いていた女性はその女性ではないだろうかと。 

考えすぎだと思うし、ここからは祖父の作り話かもしれない。ここまでの話は知っている人もいるだろうが、ここからの話は祖父からしか聞いたことがない。と父親は続けた。 
例の女性が殺されたあと殺した棺桶屋たちが彼女の家に押し入ったそうだ。どうして特注品があんな短期間で作れるのか。特殊な道具、方法でもあるんじゃないかと探したらしい。

すると家には作りかけの特注品の棺桶と見たこともない祭壇があったそうだ。特注品と言えど亡くなり方は様々なため一つ一つの大きさ、形が違う。にも関わらず彼女が特注品を先に作っているのを全員が不審に思ったそうだ。 

そんな最中不審死が起こった。 
棺桶屋たちはもしやと思い彼女の作りかけの棺桶を見にいくと寸分違わずぴったりだったらしい。もしかすると彼女が特注品の注文を貰えるようなんらかの方法、呪いで不審死を引き起こしていたのかもしれない。 
また、それが今回俺の亡くなった友人にたまたま降りかかったのでは無いだろうかと言って口を閉ざした。

亡くなった彼の両親は地元の人じゃないので、この話はしらないだろう。 
友人にも話していない。 
ただ、もう自分で溜め込んでおくのが辛くてここに書き込みをさせてもらいました。 
長文乱文駄文を長々とすいません。 

あのとき引き止めておけばと今でも思うのですが、正直怖かった。体も冷たく瞬きもせずに帰りたいという彼から離れたかった。 
本当に申し訳ない。