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当時の職場(24時間営業の書店)にダイビングやってる後輩が居て、 
 
地元の人間しか知らない釣りの好ポイントを聞いてきたって言うんだよ。
 
海岸線の国道から20分くらい入った広場に車を停めて、 
 
そこから荷物持ってさらに30分は歩かなきゃならない。 
 
でも、30cmオーバーのニザダイが入れ食いで時々グレもくる。
 
「先輩がいれば絶対大漁。大丈夫っスよ!オレの車4駆ですから」と言う。 
 
平日に2人で休みを取り、その釣り場に出かけた。すごく良い天気だった。 
 
後輩自慢の4駆を停めたら荷物持って、暑い中けもの道みたいなのをひたすら歩く。 
 
変な寒気がするし、何だかセミの声も妙に遠くで聞こえる気がして 
「熱中症?ヤバイじゃん」とか思ってたら、遠くにヒラヒラ赤いものが見える。 
 
??何だ??って思って歩いてると、その赤いものは次第に近づいてきた。

あのさ、何て言うか「これから演奏会に出ます」って感じの可愛い女の子。 
 
多分小学校の2・3年生くらいで、真っ赤な綺麗な服来て歩いて来るんだ。 
 
肩に大きなカバン背負って...オレ、寒いし、もう声出すのも怖くて。 
 
その子と目あわさないように、後輩の陰にかくれるみたいに黙って歩いた。 

釣り場に着いてから後輩に 
 
「あの子、地元の子かな?赤い服、可愛かったな、ハハハ」とか言ったら 
 
「変な冗談やめて下さいよ」って全然相手にされない。 
 
「途中で赤い服の女の子とすれ違ったろ、見なかったのかよ?」と食い下がったら 
 
「オレ怖がりだけど、そんな安い話にはひっかかりませんよ」と笑う。 

確かに良い釣り場で、その日は大きなニザダイと良型のグレを結構釣った。 
 
でも、どうしても赤い服の女の子が気になって 
 
「日が暮れてからが勝負っスよ」という後輩を説得し、早めに釣りを切り上げた。

荷物と魚の詰まったクーラーボックスを担いで車へ戻ったら 
車を止めた広場のすぐ手前に、片方だけ真っ赤な小さい靴が落ちてた。 
 
さすがに後輩も青い顔になって、2人慌てて荷物乗せて車を走らせた。 
 
一番近いローソンに着くまで、どっちも無言だったよ。 
 
だって最初車停めた時、そんな靴なんか絶対落ちてなかったし。 
 
もちろんその釣り場にはそれから一度も行ったことはないし 
これからも行く気はない。