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その時、私が精一杯搾り出した声で 

「な、何か用ですか?」 

と聞くと背後からはっきりと 

「はい…」 

と返事が聞こえました。

振り返ると私が縄をブチ切った青い岩がありました。 

そして、すぐに竹やぶを見返すともう人の気配は無くなっていました。 

その日、私は、釣り人が来るまでの間、そこから動く事が出来ませんでした。 

帰るには、その竹やぶを通らないと帰れないので…。

恐怖体験から1時間程、眼前の青い岩、後ろの竹やぶを見る事が出来ずルアーの入った箱の中をジっと見ていました。 

ようやく、背後で釣り人がこちらに向かって来ている気配を感じ取り助けを求めようと勇気を出して振り返ると、同じ学校の生徒でした。 

彼は、私より1学年下であまり面識がありませんでした。 

彼は、私を見て帰ろうとしたので私は慌てて竹やぶに走り込み追いつきました。 

すると彼は、 

「もう釣らないんですか?」 

と尋ねてきたので私は 

「釣らないけど、もうここには来ない方がよい」 

と教えてあげました。 

しかし、詳細を話しては祟られるような気がして喋りませんでした。 

無事に彼と竹やぶを抜け家に帰りました。 

普段、タックルは部屋まで持って入るのですが、家に入れる事自体が何者かを家に入れてしまう…そんな気がした為、離れの倉庫に放り込みました。 

家族にその日の出来事を一部始終話しましたが、 

「朝早く出て行くからそういう目にあう!睡眠不足や!」 

と一蹴されました。 

しかし、気持ちの切り替えが出来ず、隙間が気になって仕方がありませんでした。 

その夜、顔を隠すように布団に潜り込み眠りました。夜中に目が覚めた時に何も見たくなかったからです。 

しかし、彼らは私の部屋に来たんです。 

案の定、夜中に目が覚めました。うつ伏せで布団に潜ったままの状態でした。 

かすかに聞こえる音がありました。 

「サーカサカサ…ギー」 

風で笹がかすれ、竹がキシむ音…。 

「?…竹やぶ…?」 

私は、直感しました…。 

「今、あの竹やぶの中に居る…。間違いない…」 

そして、布団に隙間が無い様に内側を強く握り、布団を体に引きつけました。 

暫くすると布団の外に無数の気配を感じはじめました。 
すごく怖い…。 

「絶対に布団からは出ないぞ」 

と心の中で叫んだ次の瞬間、私の足の先から複数の手が布団をゆっくり押さえ付けてきました。 

あまり強くない力でゆっくりとゆっくりと私の体の形が布団に浮き出るように押さえつけてきました。 

複数の手は、軽い力で一箇所を3,4回押さえながら、爪先からふくらはぎ、おしり、背中と上がって来ます。 

そして、ゆっくりと包むように両肩を 

「グウゥゥ」 

と押さえられた時、私は、両手で掴んだ布団を額にあてて 

「ごめんなさい!ごめんなさい!縄は直しますから…ごめんなさい!」 

と謝りました。 

すると押さえてくる手の感覚がなくなりました。 

「クックン…クン、クン」「??…?!」 

顔周辺の布団を引っ張ってきました。 

この感覚には、覚えがありました。 

私がキャスト時、振りかぶった時に感じていた違和感とそっくりでした。 

押さえていた布団をつまむように引っ張り背中、おしり、ふくらはぎ、爪先と複数の手が下がっていきました。

朝まで眠る事が出来ず、布団の中で朝の気配を待ちました。 

恐怖の為、布団から出て時間を確認する事が出来なかったので、夜明けまでの時間がすごく長く感じました。 

父親の部屋のドアが開く音が聞こえたので思い切って布団から顔をだしました。 

すると、部屋の入り口に私のバスロッドが立てかけられているのが見えました。 

思わず「あ~!」「おあ~!」 

と声を出したので父親が異変に気づき部屋に入ってきました。