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山菜目当てに山をうろついていると、いかにも地元の村から
やってきたという風情の老婆から声をかけられた。

峠の土産物屋を家族で経営しているとかで、まあ、店の宣伝も
兼ねて声をかけてきたらしい。
話をしていると、地元では有名なゼンマイやワラビの群生地へ
案内しようと言ってくれた。

もしかしたら、観光客向けに山菜を栽培している場所が山の中に
いくつかあり、採取した山菜を自分の店で新鮮なうちに
調理し、手間賃を徴収する商売なのかもしれないと思ったが、
まあ、それならそれで良いと思った。

山に慣れた老婆の足は速く、ついていくのが精一杯だったが、
やがて老婆が立ち止まり、
「こっちにゼンマイ」
「ほれ、あっちがワラビ」
礼を言いながら老婆に追いつくと、確かに一面、特徴ある形の
それら山菜で溢れかえらんばかりだ。
「こっちの隅から取れ」

言われるままに老婆の指し示す場所に屈み込み、ゼンマイを摘み始めた。
ややあって、老婆の声
「じゃ、頼んだよ」
ん?頼んだって?
顔を上げようとして、目が合った。
老婆とではない。

頭蓋骨。
その眼窩が、まるで俺をじっと見上げているようだ。
眼窩から一本伸びたゼンマイ。
無論、老婆の姿はすでに無い。