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若かりし頃、早朝に川沿いの土手をジョギングしていたら、前方に一人の男が立っているのが
見えてきた。田舎にいるはずの兄だ。

良く似た人だろうと思っていたが、近くに寄ってよ~く見ても
兄そのものにしか見えない。声をかけると、
「おう、お前か。早いな」
と応える。他人の空似ではなく、間違いなく兄その人。

アレ、いつコッチ出て来たの? と訊くとギュッと顔を顰めて、
「山の神様? わからんなぁ」
と脈絡のない言葉が返って来た。え? と戸惑ってるうちに、パッと消え去る兄の姿。
これは兄ちゃんの身に何かあったな、場合によっては死んだのかも知れん!
と家に引き返し、田舎の兄宅に電話。ところが
「おう、お前か。早いな」
と電話に出る兄本人。土手で兄を見て云々、山の神様などと言って云々、と
今しがた自分が見て来た事を説明すると、
「山の神様? わからんなぁ」
と訝しげな返答。まあ山には気をつけとくよ、と話を切り上げる兄。

電話を切って一拍置いて、兄の言葉が土手で聞いたものと同じだと気付き、
数日間釈然としない嫌ァな気分が残った。

だ、そうだ。ちなみに親父さんの兄は未だ健在。