KIJ_bukiminaki_TP_V

子供の頃、実家の裏山で不気味な物を見たのだという。
風呂の焚き付けにする木っ端を拾い集めている時のこと。

普段足を踏み入れない森の奥に、何かぶらぶら揺れる黒い影が見えた。
彼のランドセルくらいの大きさだ。

何だろうと、側に近寄ってみた。奇妙な物が木にぶら下げられている。
腹を掻っ捌かれ、臓物を抜かれた小動物の死骸だった。
頭は落とされている。見たところ狸のようだ。
慌てて一緒に薪集めをしていたお祖父さんを呼びに行ったが、引き返してくると
既に死骸は消え失せていた。話を聞いたお祖父さんは渋い顔。

聞けば、猿神の仕業なのだという。
滅多に出ないのだが、件のように捌かれた死骸を見つけると、里ではしばらく
山に入るのを止めるのだと。

それを聞いて思わず「人間も捌かれたことがあるの?」と尋ねてしまう。
お祖父さんの答えは「さぁて、それは聞いたことがないな」ということだった。
以降、彼はしばらく一人で山に入れなかったそうだ。