RS758sA037_TP_V

これは1987年の2月末から3月にかけての山行での話です。
中央線沿線の山に登る人にはポピュラーな23:50(うろ憶えです)新宿発の
各停に乗り塩山で下車、少しの距離をタクシーに乗りある山の登山口に着きました。

明るくなると同時に山に入り、30分くらいしか歩いていない地点でのことでした。

まだ薄暗いなか、2名の下りて来た人を見て私たち3人は凍りつきます。
堅牢な登山靴・ツーイードらしいニッカ・その下から覗く赤いソックス・チェック
のネルシャツという真冬にしては少し軽装備ではありましたが、彼等の服装は山中
で違和感のないものでした。
しかし彼等2人は自分の首(と思われる・あるべき場所に首はなし)を小脇に抱えて
歩いているのです。
何秒か後には私たちに見向きもせず(もっとも見向く顔がありませんが)、私たちの
横をしっかりとした足どりで通り過ぎて行きました。

リーダーの「振り向くな!」の声を無視して彼らの後姿を見てみると、彼等は少し前
に流行ったフレーム付きのザックを背負っていまいた。
脇の下から覗く首には(胴体と繋がっていたであろう部分の意味での首・顔の部分は
多分下向きに抱えていました)出血はありませんでした。

私は、彼等が木々の間に隠れて見えなくなるまで、何の感情も無く見送っていたのを
憶えています。

雪(風花かも)が少しだけ舞っていました。