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これは俺の体験談。
俺が小6のとき同級生(以降A君)が川に溺れて亡くなった。
当初は行方不明となっていが、数日たって川で遺体となって発見された。
でもこれは俺の中ではただの不慮の事故でないと思っている。

A君は俺と一緒に釣りをする友達だった。
小学校5年生のときにA君と俺は同じクラスになった。
お互いに釣りをすると知ってからは、必ず二人で一緒に釣りに行くまで仲良くなった。
小学校5年生の夏休みはほぼ毎日と言っていいほど二人で釣りに行っていた。

6年生になっての春。
雪が解けて自転車も解禁になり、釣りシーズンが始まって間もない頃の6月のあの日。
A君が別の同じクラスの子(B君)を連れて釣りに行く途中の姿を目撃した。
A君と一緒にいたB君は、俺と馬の合わない子だった。
B君は、俺やA君にライバル意識があったからか、事あるごとにマウントを取って来るような子。
たとえば俺があるゲームでハイスコアを出したというと、B君は「俺はお前より1万点高い」などという具合に。
子供のつまらない意地の張り合いだと言ってしまえばそれまでだが、当時の俺はどうしても受け入れることができず、B君とはなるべく距離を取っていた。
そんなB君とA君が一緒にいる姿を見て、俺は嫉妬心がわいてしまい、もうA君とは釣りに行かないでおこうとさえ思った。

その日の夜になってのことだ。
「A君がいなくなった」とクラスの連絡網で電話が来た。
俺はA君と仲が良かったということで、A君の母親と電話で話すことになった。
A君母からは「釣り道具が部屋にないから一緒に釣りに行った?」と聞かれた。
ここで正直に「B君と一緒にいるのを見かけた」と言えばよかったのだろうが、子供だった俺は嫉妬心から「今日は一緒に行っていない。A君を見かけてもいない。」と言ってしまった。

そのあと、俺は親の車に乗り、A君の行きそうなところを探して回った。
A君と今まで釣りをした場所を思い出せる限り周り、俺の親はその場所を全てメモしていた。

これは後から俺の親から聞いて知ったことだが、A君の親は今でいうところのネグレクトで、A君が普段何をしているのかさえ知らなかったのだと言う。
確かに、A君は夏と冬で3着ほどの服を着回ししていたし、家にご飯が作られていることはなかった。
だから二人で釣りに行った帰りは、俺の家によってご飯を一緒に食べて帰るということも珍しくなかった。

俺の親が釣りの場所をメモしていたのは、警察か先生かに頼まれ、A君が落ちたと思われる場所を特定するためにやっていたことだろう。
携帯電話などなかった時代の話だ。
一通りこれまでA君と行った釣り場を回り、付近に自転車や釣り道具がないかを確認したあと、自宅に戻った。
親はそのあとも誰かと電話していたようだが、深夜0時を回っていたので親に「もう寝なさい」と言われ寝ることにした。

翌日、学校はいつも通りに行った。
クラスの中がA君が行方不明になった話題でもちきりだった。

B君は、というと。
何食わぬ顔でみんなの話に参加していた。

俺はB君を問いただすことができなかった。
B君は気性が荒く、何か気に入らないことがあると暴力をふるう子でもあった。
B君がA君と一緒にいたところを俺が見たことは、B君は間違いなく気づいていない。

クラスのみんなが俺が一緒に釣りに行ったのだろうと疑ってかかったが、それらを否定するのに手いっぱいだった。

その日、全校集会が開かれ「児童同士で川や海などへ遊びに行くな」「出かけるときは必ず家の人に行き先を告げろ」などと言われた。

A君の親はその日も朝からずっとA君を探し回っていたらしい。
俺の親も捜索に協力していた。

行方不明となった日から2日後くらいだったと思う。
A君が履いていたと思われる靴が、川の中から発見されたと先生から話を聞いた。
発見場所はA君と俺がいつも行っていた釣り場のずっと上流の方だった。
「靴が川の中から発見された」
小学生の俺でもその先にあるであろう現実を想像するには十分な出来事だった。

俺はショックで熱を出した。そして学校を休んだ。
正直学校には行きたくなかったからちょうどよかった。皆が「俺がA君を見殺しにした」などと言っていたので。

俺の母親も仕事を休み、看病をしてくれていた。
そんな中、学校から家に電話があった。「A君が発見された」と。
その後あったA君の通夜や葬儀には、俺は熱と嘔吐が酷く参加できなかった。

一週間ほどして体調が戻り、学校に行くと皆から俺は「人56し」と呼ばれた。
俺は必死に「警察が調べればわかることだろう」と反論したが、誰も聞いてくれなかった。
B君は俺へのいじめには参加こそしないものの、相変わらずの何食わぬ顔。そして俺がいじめられる様子を見ているだけ。
頭にきた俺は担任に「実はあの日、B君がA君と一緒にいるところを見た」と伝えた。

担任は俺が精神的ショックで寝込んでいたことを知っていたので、子供の妄想とでも思ったのだろう。
全く取り合ってくれなかった。

自分の親にも話した。
だが「お前はあの日A君を見ていないと言ったよな?どういうことだ?嘘だったのか?」と詰められる始末。

それからしばらくしてB君が俺に「先生にチクったろ?」と怒って殴りかかって来たことがあった。
先生か俺の親のどちらが話したかはわからないが、警察に「A君がB君と一緒にいた」と俺が話したことが伝った。
B君は親から叱られたそうだが「会っていない」の一点張りで通したようだ。

A君の当日乗っていた自転車は釣りをしていたと思われる現場近くから発見された。
だが釣り道具は一部しか見つからなかった。
しかも発見された釣り道具は川から少し離れた草むらにあった。

警察は最終的に「A君が誤って川に落ちるなどし溺れて死んだ」としたようだが、俺の中での答えは違う。
あの日、B君は間違いなくA君と一緒にいた。俺の見間違いではない。
そして、A君がお年玉で買ったと言って大切にしていた釣り竿やルアーをどこかに置いて川で遊ぶはずなどない。

その後、中学へ進学となったが、学区の関係で俺はクラスの大半の子とは別の中学へ進むことになった。
そして父親の仕事の関係で、俺は中1の秋に別県へと転勤になった。

小学校の同級生とはその後20年以上疎遠となった。
だが某SNSで卒業校を入力していたところ、同級生が見つけてくれ、そこから連絡を取るようになり、同窓会へ出席することとなった。

同窓会ではA君の話も出た。
当時の私へのいじめを口に出す者はなかったが、いじめという認識もなかったのだろう。
私が彼らと同じ立場であったなら、同じようにいじめに参加していた可能性もある。
彼らを責めたいという気持ちは今は微塵もない。

同窓会にB君の姿はなかった。
B君はクラスの大半と同じ中学へと進学したが、2年生のときに転校したらしい。
小学校の同窓会には一度も参加していないそうだ。

もし今のB君に会うことがあったなら真相を知りたい。
あの日、A君の身に何があったのか。
事件ではなく本当に事故だったのか。

それだけが心残りです。